世界に誇る東京のモノづくり『輝く技術光る企業』2012年1月号に掲載

2012年1月 

7

『生産体制のIT化により、納期を最大8分の1にまで短縮した企業』との紹介をいただいています。

社員全員に当事者意識を持ってもらい、生産体制をIT化。
納期を最大8分の1にまで短縮した精密板金加工企業

何を作っている?

開発者の設計どおりに製品を作ると、どのような形になるのか。新製品が世に出る前、試しに作ってみる試作という過程がある。深沢製作所は大手家電メーカーの試作を手伝い、OA機器や薄型テレビ、家庭用ゲーム機器やパソコンなどの部品を加工してきた。

部品を試作してみると、「量産する時、ここに気を付けないといけない」というところが見えてくる。そうした情報についても顧客企業に伝え、適切な量産方法について提案する生産設計も深沢製作所の仕事。最近では量産自体を任されることも増えてきて、試作と量産の売上はほぼ同じくらいになっている。

試作時に求められるのは、第一に早さ。同じような製品を開発している競合会社がいるのなら、より早く製品を完成させて、1分1秒でも先に発表できるかどうかで世間の注目が大きく違ってくる。そのような環境で長年鍛えられたことで、朝に受け取った注文の品をその日の夕方に出荷することだって深沢製作所になら可能だ。

会社の強み

注文が届いてから納品するまでに掛かる時間は、ここ10年で劇的に改善してきた。中には8分の1ほどにまで短縮できたものもあるほどだ。
それほどの大きな改善を生み出す原動力になったのは、社員の意識変化。「会社は一つの家族」と考える栗原正雄代表取締役の下、全社員が「納期に遅れるとどうなるか」と当事者意識を持ち、同じ方向を向いて仕事ができるようになった。

そればかりが要因ではなく、生産体制のIT化も貢献。顧客企業から届いた設計図のデータは、CADデータのまま扱う。CADデータからは、加工装置を制御するのに使うCAMデータを社内で作成。そのデータを加工装置に読み取らせて加工作業に入る。

「設計図の図面を展開して、実際に加工装置を動かすまでに、4~5時間ほど掛かっていました。IT化を進めることで、そこを劇的に短縮できたことも大きかったです」(栗原氏。以下、同)

職場としての魅力

「企業が若手社員を育てるのは、家族が子供を育てるのと同じ」と考え、職場環境には配慮している。生産拠点である神奈川工場が働きやすい環境となるように十二分に投資をし、「社員には健康で長生きしてほしい」と有機野菜・無添加にこだわった社員食堂も作った。

教育制度については、社内で必要になる技術力を23項目に分類し、項目別に学習用資料を整備。技術力の達成具合を7段階で評価し、技術の習得に伴って給料も増えていく仕組みにしている。

技術力だけでなく、人間力も磨いてもらうため、ビジネスで必要なコミュニケーション能力
やマナーを身に付けてもらうことも大切にしている。顧客である大手企業から「うちにもこんなにしっかりしたものはない」と驚かれるほどの充実ぶりなのだ。

INTERVIEW

代表取締役栗原正雄さん

小さな企業であっても、やり方次第ではグローパルな環境の中で仕事ができるはずです。海外とのコミュニケーションを増やしていきたいと考えています。

最近、ドイツのハノーバーで開かれた展示会に出展しました。外国企業に当社の魅力がどれくらい伝わるものか、外国企業からの依頼にどれだけ応えられるものかと調査を始めている段階です。

当社は以前、365日いつでも営業している「コンビニのような板金」であろうとしてきました。今後はネット銀行ならぬ「ネット板金」であることを目指しています。つまり、インターネットで設計図のデータを受け取って、お客様とのコミュニケーションもネットで完結させて、短期間のうちに納められるようにしたいのです。言うなれば「板金のAmazon」でしょうか。お客様から注文いただければ、翌日には製品を届けられる。そういう体制にしていきたいです。

取引を増やしたい業界としては、自動車や医療機器の業界が挙げられるでしょうか。これまでは家電メーカーの試作をお手伝いしてきましたが、ほかの業界の仕事も増やしていきたいですね。

製造1部課長陣田さん

部品の元になる金属の母材を扱っています。パンチプレスで打ち抜いたり、レーザー加工機で切断したりすることで、部品の原形を形作る最初の工程になります。

0.4ミリの銅板を加工したことがあります。レーザー加工機で対応していない薄さですから、バンチプレスして抜き出すしかありません。ですが、プレス機でも厚さが0.5ミリはないと上手くできません。そんな難しい仕事でしたが、これまでに蓄えてきたノウハウを使うことで、きれいに加工することができました。

お客様からも「通常のやり方では加工できないはずなのにどうやったのですか?」と興味を持っていただけました。お客様の要望以上の仕事ができましたから、誇らしかったですね。

管理部久保寺さん

量産品の受注を受けて、各所に手配する仕事を主に担当しています。材料の在庫入力システムで管理されていますから、必要な致の部品を作るのに十分な在庫があるかと確認をして、めっき処理が必要な品物だったらその工程を外注する手配もします。
まだまた分からないことがたくさん出てきますが、分からないところは質問をすれば、しつかり教えてくださいます。質問しなくても、黙り込んで困っている檬子を察して、先輩から声を掛けてくださることもあります。社員間の距離が近いですし、組織としての団結力を感じますね。どんな仕事でも必要なら必ず手を賞してくれますし、働きやすい職場です。

POINT
◆大手メーカーの製品試作を手伝い、生産設計・量産にまでかかわる
◆注文から納品までを劇的に短縮。朝に注文された品物の夕方出荷も可能
◆「社員には健康でいてほしい」。有機野菜・無添加にこだわりの社食を完備